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日本でパンダは増やせない?中国にパンダが多い理由とは?

はじめに

上野動物園やアドベンチャーワールドでパンダに会ったことのある人なら、「なぜ日本には少ししかパンダがいないのだろう」と不思議に思うかもしれません。
日本でまったく育てられないわけではないものの、野生のパンダが生息するのは中国だけ。
この記事では、中国にパンダが多い理由と、日本でパンダを増やすことが難しい背景を分かりやすく解説します。

パンダの大群

中国にパンダが多い理由

  • 固有種である
    • ジャイアントパンダは中国四川省・陝西省・甘粛省の山岳部にだけ自然分布している固有種です。
      野生個体はおよそ1800頭と推定され、多くが四川省の保護区に集中しています。
  • 竹林と山岳気候が不可欠
    • パンダの主食は竹で、一日に10~20kgほど消費します。
      野生域では200種類以上の竹が季節ごとに繁茂し、標高の異なる山々を移動しながら食料を確保できます。
      こうした大規模な竹林と涼しい気候は中国の特定地域でしかそろいません。
  • 国家的な保護政策
    • 1960年代から絶滅危惧種として国家重点保護動物に指定され、自然保護区の設置や人工繁殖センターの整備が進みました。
      成都ジャイアントパンダ繁育研究基地などで飼育繁殖技術が蓄積され、国内での生息数回復に貢献しています。

日本での飼育現状

日本には限られた施設にしかパンダがいません。

いずれの個体も中国政府からの「繁殖研究を目的とした長期貸与」という形で来日しているため、産まれた子どもも原則として中国の所有となります。

なぜ日本で増やすのが難しいのか

気候と食料の確保

日本の動物園でも空調設備を整え、輸入竹や国内産竹を確保して飼育できますが、野生に近い変化に富んだ竹林環境を再現するのは困難です。

繁殖が繊細

パンダの発情期は年に1回、わずか2~3日しかありません。

人工授精やペアリングには高度な経験と検査設備が必要で、失敗も珍しくありません。
中国の繁殖センターは数十年にわたる症例データと専門スタッフを抱えており、そのノウハウが集中しています。

国際的な取り決め

ワシントン条約と中国の国内法により、パンダの譲渡は厳しく管理されています。
繁殖目的の貸与には高額な協力金が発生し、飼育環境や研究計画の審査も厳格です。
日本でペアを増やすには追加貸与の交渉が欠かせず、手続きとコストが大きなハードルになります。

疾病リスクと遺伝管理

個体数が少ない日本国内だけで繁殖を繰り返すと近親交配のリスクが高まります。
国際血統登録簿で遺伝的多様性を管理するため、中国のセンターと定期的に個体交換しなければならず、結果的に「日本だけで完結した繁殖」は難しくなります。

まとめ

日本でもパンダを飼育・繁殖することは可能ですが、野生個体が存在しないうえに、気候・食料・専門技術・国際合意といった多くの条件がそろわないと数を増やすのは容易ではありません。
一方で、中国は固有種の生息地を抱え、国家規模で保護と研究を続けてきた結果、世界最大のパンダ個体群を維持しています。
日本でパンダに会えるのは、中国との協力と国際保護体制があってこそだと言えるでしょう。

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