はじめに
望まれない妊娠や経済的困難などで「育てられない」と悩む親を救い、赤ちゃんの命を守る最後のセーフティネットとして設置されたのが赤ちゃんポスト(ベビーボックス)です。
親は身元を明かさず、24 時間いつでも安全に赤ちゃんを預けられ、医療スタッフがただちに保護します。
路上放置や乳児遺棄を防ぐ緊急手段として世界各地に広がり、日本でも導入が進みつつあります。

赤ちゃんポスト(ベビーボックス)とは
親が匿名で赤ちゃんを預けられる保育器付きの小さな扉を備えた施設。
扉が閉まると院内にブザーが鳴り、医療スタッフが赤ちゃんを確認・診察します。
日本では病院併設型のみが運用されています。
目的としくみ
目的 | しくみ |
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命の安全確保 | 保育器は適温・適湿。 閉扉と同時にスタッフが駆け付け医師が健康チェック |
母子の匿名性を担保 | 親は名前を名乗らなくてよい。 代わりに母子の健康情報や手紙を投函できる |
社会的ケアへ橋渡し | 児童相談所が一時保護し、里親委託や特別養子縁組へつなぐ |
日本の歴史と最新動向
- 2007 年 5月
- 熊本市の慈恵病院が国内初の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を開設
- 運用開始から 2023 年度までに累計 179人 が預けられています
- 2025 年 3 月 31 日
- 東京都墨田区の賛育会病院が「いのちのバスケット」を開始し、国内 2 カ所目の赤ちゃんポストとなりました
- 開始から 1 か月後の 2025 年 5 月 1 日、最初の新生児が預けられたことが報じられました。(2025/5/1時点)
世界の状況
ベビーボックスはドイツ・ポーランド・韓国など 20 か国以上 に導入され、地域や文化によって名称や運営主体が異なります。
欧州では福祉施設や消防署に設置する例もあり、米国では Safe Haven Law に基づく「ベビーボックス」が増加中です。
賛否をめぐる論点
賛成の声 | 懸念・課題 |
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乳児遺棄・虐待死を防げる最後の砦 | 匿名性が子どもの「出自を知る権利」を奪う可能性 |
孤立した母親が命を守る選択肢を得られる | 利用を想定した育児放棄を助長する懸念 |
望まない妊娠の相談窓口と連携できる | 専用法がなく自治体判断に依存し運用が不透明 |
法制度と今後の課題
日本には赤ちゃんポスト専用の法律がなく、児童福祉法と医療法の枠内で病院が自主運営しています。
2024 年施行の「内密出産」制度と連動し、
- 全国的なガイドライン整備
- 出自を知る権利と匿名性の調整
- 相談窓口の拡充と複数拠点化 が急務とされています。
まとめ
赤ちゃんポストは「赤ちゃんの命を守る最後のとりで」として 2007 年に熊本市で始まり、2025 年に東京へと広がりました。
制度を必要とする親子は少数でも確実に存在します。
“必要な人が迷わず辿り着ける仕組み” を社会全体で整え、出自を知る権利との両立を図りながらサポートを充実させることが今後の課題です。