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鳥を飼ってなくても忍び寄る…「オウム病」の意外な感染ルートと対策とは?

はじめに

「オウム病」と聞くと、オウムやインコなどの飼い鳥を世話している人だけが注意すればよい病気だと思っていませんか? 
実は、ペットをまったく飼っていない人でも感染するケースが毎年報告されています。
原因は、駅前に集まるハトのフン、ペットショップでの短時間の滞在、さらには風に舞った羽毛やほこり――身近な生活環境に潜む“ほんのわずかな鳥由来の粉じん”です。

オウム病はインフルエンザに似た発熱やせきから始まり、重症化すると肺炎を引き起こすこともある人獣共通感染症。
とはいえ、正しい知識と基本的な対策を押さえておけば、リスクをぐっと下げることができます。
この記事では、鳥を飼っていなくても感染に至る意外なルートと、今日からできる予防策をわかりやすく解説します。

オウム

オウム病とは

オウム病(psittacosis)は クラミジア・シッタシ(Chlamydia psittaci) という細菌が引き起こす人獣共通感染症です。
主な感染源はオウム・インコ類をはじめハトやカモなど幅広い鳥類で、菌を含むフンや羽毛の粉じんを吸い込むことでヒトにうつります。

典型的な潜伏期間は1〜2週間で、発熱・倦怠感・乾いたせきなどインフルエンザに似た症状から重症肺炎までさまざまです。
妊婦や高齢者では重症化しやすく、日本では4類感染症に指定されています。

鳥を飼っていなくても感染するルート

2025年6月に長崎県で、鳥を飼育していなかった妊婦がオウム病に感染して死亡した事例が報告されました。
感染経路は特定されていませんが、次のような“間接暴露”が考えられます。

想定ルート具体的なシーン補足ポイント
野鳥のフンが乾燥して舞い上がるベランダや公園、駅のホームなどハトが多い場所で長時間過ごす乾いたフンが粉状になり風で拡散しやすい
ペットショップ・動物園・鳥カフェの訪問鳥小屋や展示スペースで深呼吸・会話一時的な立ち寄りでも吸入リスクがある
病鳥や死鳥を扱う職場・趣味農場、屠畜場、野鳥救護活動とくに換気が悪い屋内作業で危険度上昇
他人の飼い鳥からの二次飛散家族や友人宅でケージ掃除中に居合わせる鳥自体は無症状でも菌を排泄していることがある
稀なヒトーヒト感染重症患者の気道分泌物に濃厚接触世界的に報告は少ないが完全に否定できない

症状と重症化のリスク

  • 潜伏期
    • おおむね5〜14日
  • 主症状
    • 突然の高熱、乾性せき、頭痛、筋肉痛、倦怠感
  • 重症化すると
    • 肺炎、多臓器不全、妊婦では流産・早産の危険
      近年まとめられた妊婦症例のレビューでは、母体死亡率8〜9%・胎児死亡率80%超と報告されており、早期診断が生死を分けます。

診断と治療

  • 血液や喀痰のPCR/血清抗体検査で確定
  • 一般成人はドキシサイクリンなどテトラサイクリン系が第一選択
  • 妊婦にはマクロライド系(アジスロマイシン等)が推奨されます

予防のポイント

  1. 野鳥の集まる場所で舞い上がった粉じんを吸わない(マスク着用・長居しない)
  2. ペットの鳥を飼う場合はケージをこまめに清掃し、フンを乾かさない
  3. 掃除の際は手袋とサージカルマスクを使用し、作業後に手洗いとうがいを徹底
  4. 咳や発熱が続き、鳥と接触歴がある場合は早めに受診し、鳥接触の有無を医師に伝える
  5. 妊娠中は鳥カフェ・飼い鳥の世話・野鳥救護など高リスク行動を避ける

まとめ

オウム病は「鳥を飼っていないから無関係」とは言い切れません。
野鳥のフンやペットショップなど思わぬところに感染源が潜んでいます。特に妊婦は重症化しやすいため、日常生活での粉じん吸入を避け、異変を感じたら速やかに医療機関を受診しましょう。
知識と基本的な衛生対策が、命を守る第一歩になります。

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