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「コンプライアンス違反」とは何か?企業も個人も知っておきたい基本とリスク

はじめに

「○○社がコンプライアンス違反で謝罪」というニュースを目にする機会が増えましたが、「結局なにが“違反”なの?」「自分の会社には関係あるの?」と感じている人も多いかもしれません。
コンプライアンスという言葉は知っていても、その意味や影響を正しく理解していないと、思わぬリスクに巻き込まれることもあります。
この記事では、コンプライアンス違反とは何か、具体的にどんな行為が該当するのか、そして発覚した場合に企業や個人にどんな影響があるのかを、分かりやすく解説します。

コンプラ違反

コンプライアンスとは

コンプライアンス(compliance)とは「法令遵守」と訳されますが、実際にはもっと広い意味を持ちます。
法律や規制を守ることに加え、企業倫理・社内ルール・社会常識などを含めた「正しい行動をとること」全般を指します。

そのため、「違法ではないけど不適切」な行為もコンプライアンス違反とみなされるケースがあります。

たとえば、取引先への過剰接待や社員のパワハラ行為なども該当することがあります。

代表的なコンプライアンス違反の例

法令違反

脱税、独占禁止法違反、粉飾決算、個人情報保護法違反など。

例:売上を過大計上して株価を吊り上げるなどの不正会計

労務管理の不備

長時間労働、残業代の未払い、パワハラ・セクハラの放置など。

例:サービス残業が常態化し、是正勧告を受ける

情報セキュリティ違反

顧客データの流出、USB紛失、内部情報の持ち出しなど。

例:退職時に営業リストを無断でコピー

公序良俗や倫理の逸脱

虚偽広告、下請けいじめ、過剰な値引き強要など。

例:嘘のデータを使って商品の安全性を偽る

社内ルールの軽視

経費の私的流用、利益相反取引の未申告、会社資産の無断使用など。

発覚するとどうなるか

企業への影響

  • 信頼失墜による顧客離れ
  • 株価の下落、売上減少
  • マスコミ報道による風評被害
  • 行政指導、課徴金、場合によっては刑事責任

個人への影響

  • 懲戒処分(減給、降格、解雇)
  • 信用情報の傷
  • 再就職への悪影響

国内における主なコンプライアンス違反の前例

オリンパス〈2011年・粉飾決算〉

十年以上にわたって損失を隠す会計操作を続けていたことが発覚し、元役員が有罪判決。
会社としても約70億円の罰金と信用失墜を被りました。参考

東芝〈2015年・不正会計〉

複数部門で利益を水増しする不正が判明し、有価証券報告書の虚偽記載で課徴金を課されました。
東証2部降格となり、企業イメージも大きく損なわれました。参考

SUBARU〈2017年・完成検査不正〉

資格を持たない従業員が新車の検査を行っていた問題で、出荷停止や大規模なリコールが発生。
製品の信頼性を揺るがす結果となりました。参考

NEXCO西日本ほか〈2020年判決・橋梁補修談合〉

高速道路の橋梁補修工事で談合が行われ、公正取引委員会は複数社に総額23億円超の課徴金納付命令を出しました。
公共工事のカルテルは必ず摘発されるという教訓を改めて示しています。参考

ビッグモーター〈2023年・保険金不正請求〉

不正な修理で保険金を水増し請求していたことが明るみに出て、金融庁からの業務停止、銀行との取引停止、信用失墜に発展しました。参考

コンプライアンス違反を防ぐには

トップが姿勢を示す

経営陣が率先して「ルールを守る姿勢」を社内外に発信し続けることが大切です。

定期的な教育と研修

社員がルールやリスクを理解するために、定期的な研修を行うことが有効です。

内部通報制度の整備

匿名でも通報できる制度を整えておくと、早期発見につながります。

明確なルールと手順の整備

行動指針やガイドラインを明文化しておくと、判断に迷う場面でも適切な行動がとれます。

まとめ

コンプライアンス違反は、単なるルール違反ではなく、企業や個人に大きなダメージを与える深刻な問題です。
法律だけでなく、企業倫理や社会的責任も含めた“広い意味での誠実さ”が求められる時代になっています。
普段の業務の中でも、「これって大丈夫かな?」と少しでも疑問を感じたときは、ルールを確認する、相談する、といった意識を持つことが大切です。小さな行動が、大きな信頼を守ることにつながります。

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