はじめに
「食べたいのに食べられない」「食べるのを止めたいのに止められない」。
摂食障害は、ただの食欲の問題ではなく、心の奥にある不安や葛藤が関わる深刻な精神疾患です。
思春期の女性に多いイメージがありますが、大人や男性にも発症することがあり、本人だけでなく家族も大きな不安を抱えることになります。
今回は摂食障害の種類や原因、母親や家庭環境との関係、知っておきたい回復へのヒントを解説します。

摂食障害とは?
摂食障害は、食事のコントロールが極端に乱れ、心身に大きな負担がかかる精神疾患です。
思春期の女性に多く見られますが、誰にでも発症する可能性があります。
摂食障害の主な種類と症状
神経性やせ症(拒食症)
太ることへの強い恐怖から極端な食事制限をし、極度の低体重になる病気です。
無理な食事制限に加えて、過剰な運動や下剤の使用などが見られます。
神経性過食症(過食症)
大量の食べ物を一気に食べ、その後に嘔吐や下剤で体重増加を避けようとする症状が繰り返されます。
罪悪感や自己嫌悪を強く感じ、心のダメージが大きいのが特徴です。
むちゃ食い症(過食性障害)
過食症と似ていますが、嘔吐や下剤の使用がなく、むちゃ食いだけが繰り返される状態です。
体重増加に苦しみながらも、やめられない苦しさを抱えます。
摂食障害の原因
原因は一つではなく、複数の要素が複雑に絡み合っています。
- 完璧主義や自己評価の低さ
- 「完璧でなければ愛されない」という思い込みや、自分に自信が持てない気持ちが根底にあります。
- ストレスや心の傷
- 学校や職場のストレス、いじめ、家庭内の不和などがきっかけになることがあります。
- 社会的な美の価値観
- 「痩せている=美しい」という価値観が強く影響し、特に思春期の女性にプレッシャーを与えます。
- 家族関係の影響
- 摂食障害では、母親との関係が大きく影響していると言われます。
母親との関係が影響することも
母親に関心を向けてもらいたくて
幼少期に「親に迷惑をかけたくない」と自分を抑えてきた子どもが、「本当は母親にもっと甘えたい」という気持ちを抱え続けることがあります。
その結果、無意識に拒食や過食を通じて母親の関心を引こうとするケースがあります。
「ありのままの自分では愛されない」という思い込みが、摂食障害につながってしまうのです。
大人になりたくない気持ち
両親や周囲の大人が苦労している姿を見て育つと、「母親のようになりたくない」という否定的な気持ちが強くなることがあります。
思春期の体の成長を止めたい一心で、食事を拒んだり嘔吐を繰り返したりしてしまうことがあります。
両親の不仲を解消したい
両親が不仲な家庭では、子どもが「自分の問題をきっかけに両親が協力し合うかもしれない」と無意識に期待して、拒食や過食を繰り返してしまう場合もあります。
しかし、これはあくまできっかけにすぎず、両親の仲が良くなればすぐに治るわけではありません。
大切なのは、家族の中で本人との関係性を見直し、「問題の原因は誰かのせい」と責め合わないことです。
男性の場合の特徴
摂食障害は女性に多いですが、男性の場合は「体形への執着」は比較的少なく、代わりに気分障害や非行といった形で心の不安が表れやすいとされています。
どう向き合うべきか
摂食障害は「わがまま」や「甘え」で起こるものではありません。
本人も「やめたいのにやめられない」苦しさと戦っています。
大切なのは、無理に食べさせようとするのではなく、安心して話ができる環境を作ること。
必要に応じて専門機関のサポートを受けるのも大切です。
まとめ
摂食障害は心の深い部分の葛藤や家族関係が影響することが多く、本人だけの問題ではありません。
特に母親との関係や家庭環境が関わるケースでは、関係性の見直しが回復の一歩になることもあります。
「どうせわかってもらえない」と孤立させず、周囲が理解を深めて支えることが、回復への大きな力になります。