はじめに
「境界性人格障害」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、実際にどんな症状があるのか、どんな人がなりやすいのかを詳しく知っている人は少ないかもしれません。
境界性人格障害(正式には境界性パーソナリティ障害)はボーダーとも呼ばれ、感情や人間関係が不安定になりやすい特徴を持つ精神疾患の一つです。
今回は、境界性人格障害とは何か、どんな特徴があるのか、原因や治療法、家族や周囲の人が知っておくべきポイントをわかりやすく紹介します。

境界性人格障害とは?
境界性人格障害(Borderline Personality Disorder / BPD)は、感情のコントロールが難しく、人間関係や自己イメージが不安定になりやすいのが大きな特徴です。
「自分は何者なのか」「自分は誰かに必要とされているのか」という強い不安を感じやすく、相手に依存したり突然突き放したりするなど、対人関係が極端になりやすいと言われています。
主な特徴
境界性人格障害の人には、いくつか共通する特徴があります。
- 感情の起伏が激しく、自分で感情をコントロールしづらい
- 親しい人との人間関係が極端に変わりやすい(理想化と否定が繰り返される)
- 見捨てられることに強い恐怖を感じる
- 衝動的な行動をとりやすく、過食や浪費、自傷行為などに及ぶことがある
- 空虚感(心が空っぽで不安な感覚)を抱えやすい
これらの特徴が強く、日常生活や社会生活に支障をきたす場合に診断されます。
以下に詳しく記載します。
境界性人格障害でよくみられる具体的な行動例
人間関係が極端になりがち
- 親しい人を突然強く理想化して「この人だけが自分をわかってくれる」と思う。
- しかし、ちょっとしたすれ違いや相手の冷たい反応で一気に相手を「裏切者」とみなし、激しく責めたり関係を切ったりする。
- 友達や恋人と「仲良し→大げんか→また仲良し→大げんか」と極端な関係を繰り返す。
見捨てられ不安からの強い束縛
- 相手が少し連絡を返さないだけで「嫌われた」「捨てられる」と強く感じる。
- その不安を抑えられずに、何度もLINEを送ったり、電話をしつこくかけたりする。
- つい相手を試すような発言をして、相手の愛情を確かめようとする。
衝動的な行動
- 感情が爆発すると、その場の勢いで高額な買い物をしてしまう。
- 自分を落ち着けるために過食や過度な飲酒を繰り返す。
- 自傷行為(リストカットなど)や「死んでやる」という発言をしてしまうことがある。
空虚感に苦しむ
- 「自分には何もない」「生きている意味がわからない」と強く感じる。
- 何かしていないと不安で落ち着かず、何度もSNSで人と繋がろうとする。
コロコロ変わる自己イメージ
- 昨日まで「自分は誰からも必要とされていない」と思っていたのに、今日は「私は特別な存在だ」と思い込む。
- 夢や理想がころころ変わり、自分が何をしたいのか分からなくなる。
これらの行動は「わざと」「甘え」ではなく、強い不安や感情の揺れをどうにもできない苦しさから出ているものです。
周囲が理解せずに「わがままだ」と責めると、本人はさらに不安になり、行動がエスカレートすることもあります。
なぜ起こるのか?
境界性人格障害の原因は一つではなく、さまざまな要素が絡み合っています。
- 生まれつきの気質(感情が揺れやすい性格など)
- 幼少期の養育環境(虐待、ネグレクト、過度な過保護など)
- 人間関係でのトラウマ体験(いじめや親子関係の問題など)
親からの愛情が得られなかったり、安心できる環境がなかったりした場合に、自分の存在価値に強い不安を持つようになることが影響すると考えられています。
治療や向き合い方
境界性人格障害は「性格だから治らない」と思われがちですが、専門的な治療で症状をコントロールし、安定した生活を送れるようになることは十分可能です。
- 心理療法(カウンセリング)
・認知行動療法(CBT)
・弁証法的行動療法(DBT):特にBPDに効果が高いと言われています - 薬物療法
抑うつや不安が強い場合には抗うつ薬、衝動性が強い場合には気分安定薬などが使われることもあります。 - 周囲の理解とサポート
本人だけでなく、家族やパートナーが正しい知識を持つことがとても大切です。
感情の波に振り回されないために、家族も専門家のサポートを受けながら接し方を学ぶことが役立ちます。
まとめ
境界性人格障害は、感情や人間関係が不安定になりやすく、自分を保つのが難しくなることが特徴の精神疾患です。
原因には気質や幼少期の環境が関係していると考えられていますが、治療法やサポート体制が整えば、症状を安定させて自分らしい生き方を取り戻すことができます。
「もしかして…」と感じたときは、一人で抱え込まずに専門家に相談してみることが大切です。