はじめに
「最近、関節が痛い…」「なんとなく動かしづらい気がする」そんな悩みを感じている方も多いのではないでしょうか。
もしかすると、その痛みや違和感の原因は「骨壊死(こつえし)」かもしれません。
骨壊死は、骨に十分な血液が届かなくなることで骨の組織が死んでしまう病気です。
放っておくと関節の変形や強い痛みを引き起こし、日常生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
この病気は、進行するまで気づきにくいのが特徴です。
この記事では、骨壊死の基本的な知識から原因、症状、治療法までをわかりやすく解説していきます。

骨壊死ってなに?
「骨壊死(こつえし)」とは、骨に十分な血液が届かなくなり、骨の組織が死んでしまう病気です。
英語では「avascular necrosis(無血管性壊死)」や「osteonecrosis(骨の壊死)」とも呼ばれます。
骨は固くて丈夫なイメージがありますが、実は生きていて、血液によって栄養と酸素をもらっています。
ところが、何らかの原因でこの血流が遮断されると、骨の細胞が死に、壊れていきます。
壊死が起きると、骨がもろくなったり、関節が変形したり、ひどい場合は歩くことが難しくなることもあります。
主な発症部位
骨壊死は体のいろいろな骨に起こりますが、特に多いのは次の場所です。
- 大腿骨頭(股関節)
- 膝の骨(大腿骨顆部など)
- 上腕骨頭(肩)
- 顎の骨(顎骨壊死)
骨壊死の主な原因
血流が悪くなる原因にはさまざまなものがありますが、以下のような要因が知られています。
- ステロイド薬の長期使用
- 免疫抑制や炎症を抑えるために使われる薬ですが、骨の血流を妨げる副作用があるとされています。
- アルコールの過剰摂取
- 大量の飲酒を続けると、脂肪が血管を詰まらせて血流を遮ることがあります。
- 外傷(骨折や脱臼)
- 骨の周囲の血管が損傷することで、血流が届かなくなります。
- 原因不明(特発性)
- はっきりとした原因が見つからない場合もあります。
- がん治療・放射線治療
- まれに顎の骨に壊死が起きることがあります(顎骨壊死)。
骨壊死の症状
症状は発症部位によって異なりますが、共通して見られるのは以下のようなものです。
- 動かすと痛む(歩くと股関節が痛いなど)
- 安静にしていても痛む(進行した場合)
- 関節の動きが悪くなる
- 足を引きずるようになる(跛行)
- 関節の変形や腫れ
初期段階では無症状のこともあり、レントゲンやMRI検査で偶然見つかることもあります。
診断方法
骨壊死は次のような方法で診断されます。
- X線(レントゲン)
- MRI検査(初期診断に特に有効)
- CTスキャン
- 骨シンチグラフィー
MRIでは骨の血流や内部の状態がはっきり分かるため、早期発見に有効です。
治療法
軽度の場合(初期)
- 安静・運動制限
- 痛み止め(NSAIDsなど)
- 装具や杖の使用
- 薬物療法(血流改善薬など)
進行している場合
- 骨を支える手術(骨切り術など)
- 人工関節置換術(股関節や膝など)
- 骨移植手術(まれ)
治療法は年齢や症状、進行度に応じて医師と相談して決めていきます。
骨壊死は予防できる?
完全に予防するのは難しいですが、以下のような点に注意することでリスクを下げることは可能です。
- ステロイドを使うときは医師の指示に従う
- アルコールの飲みすぎに注意
- 適度な運動と栄養管理
- 外傷を避けるための安全対策
まとめ
骨壊死は、放っておくと関節が変形したり、歩けなくなるほど重症化することもある病気です。
しかし、早期に発見して適切に対処すれば、進行を防ぐことも可能です。
「なんとなく股関節や肩が痛い」「動かすと違和感がある」そんな症状があるときは、早めに整形外科を受診して検査を受けてみましょう。