はじめに
近年、クマの出没が全国的に増え、住宅街や学校、公園などに現れて人々を驚かせるケースが相次いでいます。
ニュースでよく見るのが、猟友会のハンターが現場に駆けつけ、クマを射殺するシーン。
でも「人が住む場所で発砲しても大丈夫なの?」「誰の指示で撃っているの?」と疑問に感じたことはありませんか?
この記事では、街中でのクマ対応における法的な仕組みや、警察と猟友会の関係について解説します。

一般人はもちろん、住宅街での銃の使用は原則禁止
まず大前提として、日本では銃の所持・発砲は銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)によって厳しく規制されています。
狩猟用や競技用などの特別な許可を得ていても、住宅街など人の多い場所での発砲は極めて危険とされ、原則禁止です。
警察官には「拳銃使用」のルールがある
一方で、警察官は犯罪の制止や自己・他人の生命の保護など、正当な職務の範囲内であれば拳銃を使用することが認められています。
これは「警察官職務執行法」という法律に基づいています。
たとえば以下のようなケースです。
- 犯人が刃物や銃で襲ってきた
- 人の命が危険にさらされている
- 犯人の逃走を阻止する必要がある
ただし、使用はあくまで「必要最小限」であり、正当防衛・緊急避難の原則も同時に求められます。
住宅街で発砲はできるのか?
理論的には、住宅街であっても上記のような緊急性が認められれば、警察官が職務で拳銃を使用することはあります。
しかし、実際には周囲の住民の安全や弾の跳弾リスクを考慮し、発砲は最後の手段です。
たとえば、
- 犯人が住宅街で発砲してきた
- 人質を取って暴れている
といった極限状況でなければ、むやみに銃を撃つことはまずありません。
多くの警察官は発砲を避けるため、説得や逮捕術など、あらゆる手段を講じます。
クマが街中に出たとき、誰が対応する?
基本的に、野生動物が人の生活圏に現れた場合は、まず警察に通報されます。
警察は現場を確認し、周囲に危険が及ぶ場合には地域住民に避難を呼びかけるとともに、市区町村の自治体に連絡を入れます。
ここで重要なのが、実際にクマを捕獲・駆除するのは「猟友会(りょうゆうかい)」という、各地域の有害鳥獣駆除を担うハンターの組織だということ。
つまり、警察や自治体は「対応の要請」を行い、猟友会のメンバーが実際の捕獲・発砲を担います。
猟友会は勝手に撃てない!「発砲の許可」は誰が出す?
ここが誤解されやすい部分です。
猟友会のハンターであっても、勝手に街中で発砲することはできません。
これは「鳥獣保護管理法」や「銃刀法」などによって厳しく規制されています。
具体的には
- 自治体(市区町村)が緊急的な駆除を判断し、猟友会に出動を要請
- 現場では警察が安全確保・交通規制・周辺住民の避難を担当
- ハンターは、自治体や警察の要請に基づいて対応
という形になります。
つまり、警察官が「撃て」と直接命令するわけではないですが、現場の状況を見て「危険度が高く、駆除もやむを得ない」と判断された場合に、発砲が許容されるというのが実態です。
警察官自身がクマを撃つことはあるの?
例外的に、警察官自身が拳銃を使ってクマに対処するケースもあります。
ただしこれは、
- クマが今まさに人を襲おうとしている
- 周囲に逃げ場がなく、時間の猶予がない
といった緊急性の高いケースに限られます。
その場合も発砲後には、上司や第三者による「職務執行の正当性」が厳しくチェックされます。
クマを撃つことに反対の声もある?
クマの駆除に反対する人も一定数います。
主な理由は以下の通りです。
- クマは本来山にいる動物。人間が山林を開発したことで、クマが人里に降りてきた
- 駆除ではなく共存・追い払いによる対策を望む人が多い
- メスグマや子グマまで殺処分されることへの倫理的な疑問
ただし、街中で人命が危険にさらされる場面では、やむを得ず駆除されることもあるのが現実です。
最近では、麻酔銃を使った「生け捕り」や、ドローン・音響装置を活用した「追い払い」などの新しい方法も模索されています。
まとめ
街中でクマが現れた場合、猟友会のハンターが銃を使うのは「自己判断」ではなく、自治体や警察の要請に基づいた“最後の手段”です。
警察官が直接「撃て」と命令するわけではありませんが、現場の安全確保や判断には深く関わっています。
市民としては、無理に自分で追い払おうとせず、すぐに通報し、安全な場所に避難することが第一。
クマと人が安全に共存できる社会のために、知識と心構えを持っておくことが必要です。