お金 知識

お金持ちってどこから?野村総研が分ける5つの「資産階級」をやさしく解説

はじめに

「富裕層ってどのくらいお金を持ってる人のこと?」
「自分はどのくらいの位置にいるの?」

そんな疑問に答えてくれるのが、野村総合研究所(NRI)が出している「資産階級の分類」です。
この分類は、日本の家庭(世帯)を、どれくらいの“お金(純金融資産)”を持っているかによって、5つのグループに分けています。

この記事では、それぞれの階級の意味と特徴を、2023年時点のデータを参考にわかりやすく紹介していきます。

お金に囲まれている男性

資産階級とは?

野村総研では、世帯が持っている「純金融資産」によって以下のように階級を分けています。

野村総合研究所 純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯

出典: 野村総合研究所

純金融資産とは?

現金・預金・株・投資信託・保険・債券などから、住宅ローンなどの借金を引いた「本当の手持ちの資産」のことです。

マス層(3000万円未満)

もっとも多くの人があてはまるグループです。
資産がまだ少ない若い世代や、日々の生活に追われている世帯などが含まれます。

  • 一般的な家庭の多くがこの層
  • 預金中心で、投資はあまりしていない人も多い
  • 将来に向けて資産づくりが必要な段階

例えるなら…スタート地点。ここからコツコツ積み上げていくイメージ。

アッパーマス層(3000万円以上〜5000万円未満)

マス層を卒業して、資産に少し余裕が出てきた層。
収入が安定していたり、資産運用をしている人も増えてきます。

  • 共働きや堅実な家計管理で資産を築いた世帯
  • 投資信託や保険商品なども活用
  • 退職金や相続でこの層に入ることも

例えるなら…ちょっと良いレストランにも行ける余裕がある状態。

準富裕層(5000万円以上〜1億円未満)

いわゆる「お金に困らない人たち」が多い層です。
老後資金に不安が少なく、相続・税金・資産運用の対策も意識されています。

  • 不動産収入や株の利益がある人も
  • 税理士やFPに相談しているケースも
  • 家族ぐるみでお金の教育をしていることも

例えるなら…ふだんは普通でも、いざという時に強い“安心資産力”。

富裕層(1億円以上〜5億円未満)

一般的に1億円以上の資産を持つ人を「億万長者」と呼ぶこともありますが、野村総合研究所ではこの層を「富裕層」と定義しています。

多くの人がイメージする「お金持ち」。
生活のための資産ではなく、「資産を育てて増やす」ことが目的になっていることもあります。

  • 不動産・株式・事業など多方面で資産を持つ
  • 銀行の「富裕層専用サービス」の対象
  • 子や孫への相続を前提とした資産管理が中心

例えるなら… お金がお金を生む「資産経営者」。

超富裕層(5億円以上)

全体のわずか0.2%程度しかいない、日本のトップ資産家。
資産運用というより「資産管理会社」をもっていたり、世界規模で動いていることも。

  • 多くが事業オーナーや創業者、相続資産の継承者
  • 海外不動産、海外口座、税制対策が当たり前
  • プライベートバンク(超富裕層専用の銀行サービス)を利用

例えるなら…資産というより“財団”レベル。別世界の人たち。

世帯数別の分布

各層に対する世帯数と割合は以下の通りです。

名称世帯数割合
超富裕層11万8,000世帯0.212%
富裕層153万5,000世帯2.756%
準富裕層403万9,000世帯7.251%
アッパーマス層576万5,000世帯10.349%
マス層4424万7,000世帯79.432%

超富裕層と富裕層を合わせても全体の3%以下ということがわかります。
さらにグラフに分類すると以下のようになります。

富裕層の分布図

マス層が大半を締め、超富裕層はほとんど見えません。
この図から多くの人はマス層に分類されることがわかります。

現役世代の富裕層はどのくらいいる?

この記事で紹介している「資産階級の分類」は、日本のすべての世帯が対象です。
つまり、高齢者世帯(60代・70代以上)も含まれているため、現役世代の資産感覚とはギャップがあります。

そこで、最新の家計調査(2024年/総務省)から、世帯主の年齢別に金融資産額を見てみましょう。
これは「借金などを除く貯蓄・資産の残高」を示したデータです。

世帯主の年齢平均値中央値
29歳以下446万円86万円
30代721万円250万円
40代1,111万円440万円
50代1,800万円800万円
60代2,300万円1,400万円
70歳以上2,400万円1,300万円

ご覧のように、50代でも中央値は800万円
1億円以上の資産を持つ「富裕層」に該当する人は、現役世代(おおむね20〜60代)ではごく一部に限られます

実際、現役世代の中で「純金融資産1億円以上」を保有している割合は1%未満と考えられ、5億円以上の「超富裕層」はほぼ存在しないレベルです。
このように、多くの人が「マス層」や「アッパーマス層」に属しているのはごく自然なこと
重要なのは「今の自分がどこか」ではなく、「将来どこを目指すか」です。

総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)」

「相続や贈与」で富裕層にいる人も存在する

野村総研の分類に含まれる「富裕層」の中には、相続や贈与といった“受け継いだ資産”によって富裕層に達した世帯も多く含まれていると考えられます。
つまり、統計上で「富裕層」とされる人の中にも、自力で1億円以上の純金融資産を築いた人はさらに少数派だと推測できます。

これから富裕層を目指す現役世代にとっては、収入のみで富裕層に入ることは難しく、計画的な資産運用や長期的な積み立てが不可欠になります。

不動産は含まれる?ローンがある場合は?

この「純金融資産」の分類には、持ち家などの不動産は含まれません
あくまで、現金や預金、株式、投資信託など、換金性のある“金融資産”が対象です。

たとえば、3,000万円のマイホームを持っていても、それが「金融資産」に含まれるわけではありません。
また、住宅ローンなどの借入金は差し引きされるため、資産があっても負債が多いと階級が下がるケースもあります。

つまり、「持ち家がある=富裕層」とは限らないのがポイントです。
資産階級を正しく把握するには、不動産を含まない純金融資産ベースで考える必要があります。

まとめ

野村総研が発表している資産階級は、次の5つに分かれています。

階級名純金融資産額
マス層3000万円未満
アッパーマス層3000万円〜5000万円未満
準富裕層5000万円〜1億円未満
富裕層1億円〜5億円未満
超富裕層5億円以上

「今、自分はどこにいるか?」を知ることは、これからの資産づくりにとって大切な第一歩です。
焦らず、コツコツ積み立てていけば、アッパーマス層→準富裕層へと近づいていくことも可能です。

-お金, 知識
-