はじめに
卒業式の日、重たいけれど大切な「卒業アルバム」を胸に抱えて家に帰った記憶。
何年経ってもふと開いては、当時の思い出にタイムスリップできる、そんな不思議な一冊です。
この卒業アルバム、一体いつから始まったのでしょうか?
今回は、卒アルのはじまりや時代による変化、そしてこれからの卒アルのあり方について、やさしく紐解いていきます。

卒業アルバムのはじまり
卒業アルバムのルーツは、明治時代後半にさかのぼります。
当時はまだ「アルバム」という形ではなく、卒業記念として集合写真を一枚だけ撮影し、卒業証書などと一緒に配られるのが一般的でした。
やがて大正から昭和初期にかけて、写真技術が少しずつ一般にも広まり、複数の写真をまとめた「記念帳」や「思い出帳」といった形で、今の卒アルに近いものが見られるようになります。
ただし、当時は写真も高価で、撮影や印刷も簡単ではなかったため、アルバムはごく限られた学校や一部の生徒にしか作られていませんでした。
戦後、全国に広がった卒アル文化
本格的に卒業アルバムが全国に広がったのは、戦後の高度経済成長期(1950〜60年代)です。
この時代、学校教育の整備とともに写真や印刷のコストも下がり、白黒の集合写真を中心としたアルバムが一般的になりました。
この頃の卒アルはとてもシンプルで、クラス写真、先生の集合写真、卒業式の様子など、限られたカットだけが載っているものでしたが、それでも「一生に一度の思い出」として、大切にされていました。
カラー写真と行事ページの追加(1970年代〜)
1970年代以降になると、カラー印刷が普及し、卒アルも一気に“思い出を詰め込む”一冊へと変化します。
- 修学旅行や運動会、文化祭など、学校行事のページが登場
- 個人写真や先生からのメッセージも掲載
- 部活動、友人とのツーショット、クラスの寄せ書き風ページも追加
こうして卒アルは、単なる記録ではなく、「友だちと笑った日々」や「仲間と過ごした時間」を形に残す“心のアルバム”へと進化していきました。
デジタル時代の卒アル(2000年代〜)
2000年代に入ると、デジカメやスマートフォンの普及により、写真を撮るのも編集するのもずっと簡単になりました。
- 写真のバリエーションが増え、構成もより自由に
- アルバム制作がパソコンで可能に
- 一部ではオンラインで見られる「デジタル卒アル」の導入も進む
SNSやクラウド保存が当たり前の時代に、紙とデジタルのハイブリッド型卒アルを採用する学校も登場しています。
卒アルのこれからと、少しの心配ごと
卒業アルバムは今も変わらず、多くの人にとって特別なものです。
しかし一方で、現代ならではの課題も見えはじめています。
- 卒アル写真が悪用されるリスク(AI画像生成やSNSでの拡散)
- 制作会社へのサイバー攻撃や個人情報流出の懸念
- 教員や保護者の同意確認など、作業負担の増加
こうした問題を受け、卒アルの内容や配布方法を見直す学校も増えてきました。
しかし大切なのは、「やめる」ことではなく、時代に合わせて守っていく方法を考えることです。
まとめ
卒業アルバムは、ただの冊子ではありません。
そこには、学校生活の喜びや涙、成長の記録がぎゅっと詰まっています。
時代は変わっても、「誰かと過ごした時間を残したい」という気持ちは変わりません。
これからの卒アルは、より安心・安全に、そして心に残るカタチで進化していくことでしょう。