本記事は公開されている情報や一般的な解釈をもとにまとめたものであり、スタジオジブリや宮崎駿監督の公式見解を示すものではありません。
作品の解釈にはさまざまな見方があることをご了承ください。
はじめに
スタジオジブリの映画『崖の上のポニョ』(2008年公開)は、海からやってきた少女ポニョと人間の少年・宗介の交流を描いた作品です。
公開以来、「アンデルセン童話『人魚姫』を下敷きにしているのでは?」と語られることが多くあります。
では実際に、どんな共通点や違いがあるのでしょうか。
画像はAIで作成したもので、あくまでイメージです。

『人魚姫』との共通点
アンデルセンの『人魚姫』は、人間の王子に恋をした人魚が声と引き換えに人間の姿を得るものの、最後は報われず泡となる物語です。
『ポニョ』にも、似たモチーフがいくつか見られます。
- 海に生きる少女が人間に惹かれる
- 自らの意志で人間の世界へ踏み出す
- 物語の中心に「愛」が据えられている
こうした要素から、「人魚姫を意識して描かれたのでは」と考える人が多いのも自然です。
宮崎駿監督のねらいについて
監督自身が「人魚姫を意識していた」と語ったとされる記録もあります。
もっとも、そのままの翻案ではなく、悲劇的な結末を避けて“ハッピーエンドの人魚姫”を目指したとも解釈できます。
原作の『人魚姫』が「愛のための自己犠牲」を描いているのに対し、『ポニョ』では「愛を受け入れること」「ともに生きること」に重きが置かれています。
企画書に記された言葉
制作初期の企画書には、次のような趣旨の言葉が記されていたと紹介されています。
少年と少女、愛と責任、海と生命――こうした根源的なテーマを正面から描き、神経症や不安が広がる時代に立ち向かおうとするものである。
この一文からも、『ポニョ』は単なるファンタジーではなく、現代社会に漂う閉塞感に対して「生きる力」を届けようとした作品であることがうかがえます。
『ポニョ』独自の物語性
『ポニョ』は声を失うこともなく、自らの意思で宗介のもとへ向かいます。
そして宗介が「ポニョを受け入れる」と約束することで、未来へ進む物語となっています。
別れや犠牲ではなく「愛の承認と共生」を描いた点が、『人魚姫』から大きくアレンジされた部分といえるでしょう。
まとめ
『崖の上のポニョ』は、『人魚姫』をひとつのモチーフにしていると考えられます。
ただし単純な翻案ではなく、宮崎監督が普遍的なテーマである「愛」「責任」「生命」を重ね合わせ、子どもから大人まで安心して楽しめる物語として再構築した作品です。
悲劇の結末を選ばず、新しい“人魚姫像”を提示したところに、『ポニョ』ならではの魅力があるのかもしれません。