はじめに
国会中継などを見ていると、議員同士を「○○君」と呼ぶ場面があります。
年齢や立場に関係なく「君」づけで呼ぶのは、一見不思議に感じますが、これは国会の正式な呼称ルールに基づいたものです。

「君」は敬称としての呼び方
「君」というと日常では年下や親しい相手に使うイメージがありますが、国会では意味が違います。
ここでの「君」は、「さん」や「殿」に相当する公的な敬称として使われており、相手を尊重する表現なのです。
どうして「君」なのか
この慣習は明治時代の議会制度に由来しています。
英語で議員を「Mr.」や「Sir」と呼ぶのと同じように、日本でも統一的で中立的な呼称が必要でした。
その際に「殿」では堅苦しすぎ、「さん」では口語的すぎるため、格式と親しみの中間にある「君」が採用されたとされています。
現在の運用
国会法や衆議院規則・参議院規則で、議員や国務大臣などを呼ぶ際は「君」を付けることが明記されています。
「山田太郎君」「内閣総理大臣 山田太郎君」
といった形で、公式な議事録にもそのまま記載されます。
「君」と「くん」
実は、正式には「君(くん)」と漢字表記が正しいです。
国会の議事録や規則にも「○○君」と明記されています。
一方、ニュース番組の字幕やテロップなどで「○○くん」とひらがなで表されることがありますが、これは視聴者に読みやすくするための表記上の配慮です。
意味や使い方が変わるわけではありません。
- 国会の公式表記
- 君(漢字)
- ニュースや会話などの読みやすい表記
- くん(ひらがな)
内容的にはまったく同じで、「くん」と表記しても誤りではありません。ただ、議事録や正式な文書では必ず「君」を使います。
まとめ
国会での「君」は、上下関係を示す言葉ではなく、公式な敬称として定められた中立的な呼び方です。
議論の場でお互いを対等な立場で呼び合うための、議会ならではの伝統的なルールなのです。