はじめに
インフルエンザの季節になると、「インフルエンザ脳症」という言葉を耳にすることがあります。
高熱が続くインフルエンザの中でも、この脳症は特に注意が必要な重い合併症です。
多くは子どもに見られますが、実は高齢者にも発症することがあります。
この記事では、インフルエンザ脳症の症状や原因、そして年代別の注意点と予防法をわかりやすく解説します。
インフルエンザ脳症とは？
インフルエンザ脳症とは、インフルエンザウイルスの感染によって体内の免疫反応が暴走し、脳に炎症や障害を起こす病気です。
ウイルスそのものが脳に感染するわけではなく、サイトカインストーム（免疫の過剰反応）が脳の働きを乱すことで発症すると考えられています。
発症から数時間〜1日ほどで急速に悪化することもあり、早期発見と迅速な治療が重要です。
主な症状
- 高熱（38〜40℃以上）
- 意識がもうろうとする
- 呼びかけに反応しない
- 意味不明な言動や幻覚
- けいれんや痙攣
- 嘔吐、ぐったりして動かない
これらの症状が見られた場合は、すぐに救急受診が必要です。
子どもに多い理由
インフルエンザ脳症は5歳以下の小児に多く発症します。
これは、子どもの免疫システムが未熟で、ウイルスに対して過剰な反応を起こしやすいためです。
また、体温調節や脱水に弱く、短時間で重症化しやすいという特徴があります。
高齢者にも起こるインフルエンザ脳症
インフルエンザ脳症は子どもだけの病気ではありません。
高齢者が発症するケースもあり、重症化や致命的な経過をたどるリスクが高いといわれています。
高齢者での特徴
- 発熱が目立たないことがある
- 「ぼんやりする」「話がかみ合わない」など、せん妄や意識障害から始まることが多い
- 糖尿病や心疾患、腎疾患などの基礎疾患を持つ人に多い
- 脱水や栄養不足が引き金になる場合もある
高齢者のインフルエンザ脳症は、脳炎や肺炎を同時に発症することもあり、注意が必要です。
診断と治療
病院では、血液検査や脳波、CT・MRI検査などを行い、脳の状態を確認します。
主な治療は以下の通りです。
- 抗インフルエンザ薬の投与
- ステロイドによる脳の炎症抑制
- けいれんや意識障害への対症療法
- 脱水予防の点滴や酸素管理
発症からの時間が短いほど回復の可能性が高くなるため、早期受診が命を守る鍵です。
予防法
- インフルエンザワクチンを接種する
- 重症化の予防に効果があり、特に子どもや高齢者では重要です。
- 感染対策を徹底する
- 手洗い、マスク着用、うがい、室内の換気を心がけ、感染を防ぐことが大切です。
- 体調の変化を早く察知する
- 子どもでは「けいれん」や「ぐったり」、高齢者では「反応が鈍い」「混乱している」といったサインを見逃さないようにしましょう。
まとめ
インフルエンザ脳症は、インフルエンザの重い合併症であり、特に小児に多い一方で高齢者にも起こりうる危険な病気です。
「いつもと様子が違う」「意識がはっきりしない」と感じたら、ためらわずに医療機関を受診することが大切です。
予防接種と早めの対応が、命を守る一番の手段です。
