はじめに
現代医療において、麻酔は手術や治療を行う上で欠かせない技術です。
しかし、昔は手術をする際に麻酔がなく、激しい痛みを伴うことが当たり前でした。
では、世界で初めて麻酔を作ったのは誰なのか?また、どのようにして麻酔が発明されたのか?
本記事では、麻酔の歴史や発明の背景について解説します。

1. 世界で初めて麻酔を発明した人物
1-1. 日本の華岡青洲(はなおかせいしゅう)
世界で初めて全身麻酔による手術を成功させたのは、日本の華岡青洲(1760-1835年)です。
- 江戸時代の外科医であり、1804年に麻酔薬「通仙散(つうせんさん)」を用いた乳がん手術に成功。
- 通仙散の主成分はチョウセンアサガオ(ダチュラ)を含む生薬であり、これを調合し、麻酔として活用。
- 彼の母と妻が実験台となり、多くの研究を経て世界初の麻酔手術を実現した。
1-2. 妻と母親で行った実験
華岡青洲の麻酔研究は、非常に危険なものでした。
- 彼は「通仙散」の安全性を確認するために、自らの母・於継(おつぎ)と妻・加恵(かえ)を実験台(本人たち自ら希望)にしました。
- 母と妻は何度も麻酔の試験を受け、その結果、母・於継は副作用で失明してしまいました。
- それでも妻・加恵は、夫の研究を支え続け、最終的に麻酔薬が完成。
この献身的な実験によって、華岡青洲は世界初の麻酔手術を成功させることができたのです。
1-3. 近代麻酔の発展(ウィリアム・T・G・モートン)
近代的な麻酔を実用化したのは、アメリカの歯科医ウィリアム・T・G・モートン(1819-1868年)です。
- 1846年10月16日、ボストンのマサチューセッツ総合病院でエーテル麻酔を使用し、手術を成功させた。
- これが世界初の「近代的な全身麻酔」の成功例とされる。
2. どのようにして麻酔を発明したのか?
2-1. 華岡青洲の研究
- 日本の伝統医学と西洋の知識を組み合わせ、生薬を研究。
- チョウセンアサガオなどの有毒植物の成分を利用し、安全な麻酔薬の開発に成功。
- 実験を重ね、最終的に「通仙散」を作り上げる。
2-2. モートンのエーテル麻酔
- 当時流行していた「笑気ガス(亜酸化窒素)」の鎮痛作用に着目。
- エーテル(ジエチルエーテル)を使用し、麻酔効果を確認。
- 1846年、外科手術での実用化に成功し、世界中へ広まる。
3. 麻酔の発展と影響
華岡青洲の発明があったものの、当時の日本では麻酔の普及は進まず、近代的な麻酔技術は19世紀後半に欧米で発展。
- イギリスでは1847年にクロロホルム麻酔が開発され、より安全な方法が研究されるようになった。
- 19世紀後半には、局所麻酔や全身麻酔の技術が進化し、手術の成功率が飛躍的に向上した。
4. まとめ
麻酔は、手術時の痛みを和らげる画期的な発明でした。
- 世界初の全身麻酔手術は、1804年に日本の華岡青洲が成功させた。
- その研究の裏には、母と妻の献身的な協力があった。
- 近代的な麻酔法(エーテル麻酔)は、1846年にアメリカのウィリアム・モートンが実用化。
- その後、クロロホルムや局所麻酔の技術が発展し、現代の安全な麻酔技術へとつながった。
今日、私たちが痛みを感じずに手術を受けられるのは、華岡青洲やモートンをはじめとする多くの研究者の功績のおかげです。