はじめに
現代では麻酔の発達によって、痛みを感じることなく手術を受けることができます。
しかし、麻酔が発明される前の時代、人々はどのように手術を受けていたのでしょうか?
本記事では、麻酔がなかった時代の手術方法や、それに伴う苦痛の軽減策について解説します。

1. 麻酔がない時代の手術の現状
麻酔が発明される前の手術は、極めて痛みを伴うものでした。
そのため、外科手術は「最後の手段」とされ、ほとんどの患者は手術を避けるか、耐えるしかありませんでした。
- 手術が行われる場所は、病院ではなく自宅や戦場が多かった。
- 手術の成功率は非常に低く、感染症や出血で亡くなる患者も多かった。
- 手術時間の短縮が最優先され、医師のスピードが求められた。
2. 痛みを和らげるための方法
2-1. アルコールや薬草の使用
- 手術前に大量のアルコールを飲ませて、意識を鈍らせる方法が一般的だった。
- 鎮痛作用のある薬草(ケシ、チョウセンアサガオ、マンダラゲなど)を使うこともあったが、効果は限定的だった。
- ワインや酢を患部に塗ることで、消毒や痛みの軽減を試みた。
2-2. 物理的な拘束
- 患者を押さえつけるために数人の助手が必要だった。
- 皮帯や縄で患者の四肢を縛り、動かないように固定。
- 「手術を受けるより死んだほうがマシ」と言われるほどの痛みだった。
2-3. 速さを重視した手術技術
- 手術時間の短縮が重要視され、名医とされる外科医ほどスピードが求められた。
- 19世紀イギリスの名医ロバート・リストンは、足の切断手術を28秒で完了させたという記録がある。
- しかし、スピード重視のためミスも多く、誤って助手や患者の体の別の部分を切断するケースもあった。
3. 手術の種類と困難さ
3-1. 外科手術(切断手術)
- 戦場では負傷した兵士の手足を切断する手術が頻繁に行われた。
- 速さが重要で、ノコギリで数十秒以内に切断する技術が求められた。
- 止血方法が確立されておらず、出血多量で死亡するケースが多かった。
3-2. 頭蓋骨開頭術(トレパネーション)
- 古代エジプトやインカ文明では、頭蓋骨に穴を開ける手術が行われていた。
- 意識のある状態で骨を削るという極めて過酷な治療法。
- 生存率は低かったが、成功した例も記録されている。
3-3. 帝王切開
- 古代ローマ時代では、麻酔なしの帝王切開が行われていたが、母体が助かることはほとんどなかった。
- 麻酔が普及するまでは、「帝王切開=母親の死を前提とした手術」だった。
4. 麻酔の登場と革命的変化
1846年、ウィリアム・T・G・モートンがエーテル麻酔を実用化し、麻酔の時代が始まった。
- これにより、患者は痛みを感じることなく手術を受けられるようになり、外科医のスキルよりも手術の安全性が重視される時代へと移行。
- 近代外科学が発展し、より高度な手術が可能になった。
5. まとめ
麻酔がなかった時代の手術は、
- アルコールや薬草で痛みを和らげるが、効果は限定的。
- 手術中に患者を押さえつけ、短時間で施術するのが一般的。
- 手術のスピードが重要視され、数秒での切断手術が行われていた。
しかし、麻酔の発明によって、外科手術はより安全で痛みの少ないものへと進化しました。
今では、痛みのない手術が当たり前になっていますが、歴史を振り返ると、その進歩の大きさが実感できます。